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親子連れ受験の愚を笑う

この暑い季節に、多くの県で、公立学校の教員採用試験が行われる。
今年も試験の報が流れ、蘇った記憶があった。
 
ずっと昔の話になるけれど、私の大学受験のとき、
父がついてくると言い張った。
九州の片田舎の、さらにど田舎でその一生のほとんどを過ごした父。
娘の受験についてきて、なんの頼りになるだろうか。
「都会にはひとさらいがいて、タコ部屋に入れられる」と、父は食い下がった。
想像するに、タコ部屋とは狭いところに何人も押しこめ、
強制労働をさせるようなところだろう。
そんな父のたわごとなど鼻であしらい、関西、関東、中国地方を一人で回った私は、
ひとさらいどころか子犬に吠えられることさえなく凱旋した。
するとそこには、心配のあまり体調を崩し、布団にふせっている父がいた。
高校3年の私は、冷たく父を見下ろした。
 
それから数年経ち、教員採用試験の時。
なんと、親を伴った受験生がたくさんいた。
若かった私は、愚か者だと思った。
もっとも、その愚か者に蹴散らされ、
試験に落ちた私は愚か者以下だったのだけれど。
 
そんな私だった。
そんな私だったのだけれど。
 
今年の春、息子の大学受験に、どうしてもついていくと言い張った。
夫は言った。「19歳だぞ」。
息子は言った。「何しに来るの?」。
仕方がないので私は言った。
「都会にはひとさらいがいて…」。
 
昨年の二次試験のとき、関東や東北の大学を受けに行った友人たちが
東日本大震災に遭い、親元を離れた場所で何人も被災したこと。
県外の大学に進学した息子の幼馴染が、命を落としてしまったこと。
そんなことが、私に臆病風を吹かせていた。
見知らぬ土地の大気に潜む良からぬものが、息子に害を加えるのではないかと。
 
受験地に行くと、受験会場までのルートを、息子は私と違う道で考えていた。
それは、歩く距離が少し長いけれど、
公共交通機関でのトラブルや遅れを極力回避できるルートで、
息子の確かな思考力を示していた。
受験の帰り、ごろごろとキャリーバックをひいて、のこのこ歩いていると、
「人にぶつけそうになってる!」と、息子は私のキャリーバックを取り上げた。
小さなバッグをひとつ持って、私はとぼとぼと息子の後に従った。
 
家に向かう新幹線の中で、ふと笑いがこみあげた。
人は親になると、なんと愚かになることだろうか。
父と娘と、親子二代で繰り広げた茶番劇。
 
いつの日か、息子も思い出すことがあるだろう。
無力ななりに、子どもを守ろうとした親があったことを。
ありがとうと言いたいその人が、いなくなったころ。
今の私のように。
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コメント

非公開コメント

No title

まさえ0504さん、ありがとうございます!
「笑い」もわかっていただけてうれしいです♪

息子も、覚えていてくれるでしょうかね~^^;
忘れてもいいので、また自分の子どもに対して、
親ばかでいてほしいと思っています(*^_^*)

No title

兎ちゃん、ありがとうございます!
なんと兎ちゃんは子兎とお父様と再生!?
そこでどんなドラマができるのでしょうねσ(≧ω≦*)

愚か者の親ばか、大得意なんですよ♪
まかせといてください(≧▽≦)σ
親ばかだからこそ、子どもはすくすくと育つのです♡

それにしてもめちゃめちゃ暑いですね~σσσ(≧▽≦)σσσ
ゆっくり休んで、夏バテ気を付けましょうね(^_-)~☆

No title

KURENAIさん、ありがとうございます!
「最後の見守り」になればいいのですけどね^^;
息子の周りをうろちょろして叱られております(^^ゞ
みんな、通る道ですよね。イイネ、ありがとうございます♪

No title

shizuさん、ありがとうございます。
親になると、誰にも思い当たる節、あるものですよね(*^_^*)

父が亡くなってしばらくは、優しい言葉をかけてあげなかったとか、
ありがとうと言わなかったとか、そんな思いばかりでした。
でも、時間が経つにつれて、親は別に、そんな言葉を言われなくても、十分に幸せなものだと思うようになりました。
息子もまた、人の親になって欲しいなと、それだけ思います^^;

私もshizuさんの優しさが大好きです(*^。^*)

いつも、ありがとうございます♪

No title

貴女のお父さんに気持ち判ります。
これが親子の絆なんでしょうね。
しかし、今は孫がターゲットですけどね。

No title

ふーさん、(ふーさんとお呼びしてもいいのでしょうか)ありがとうございます。
私も、今ならば父の気持ちが分かります(*^_^*)
ふーさんは、お孫さんがいらっしゃるのですね!
きっと、子ども以上に!?かわいいのでしょうね(^^)

No title

(゚O゚)\(- -; 僕を泣かす気かっ‼

No title

(゚O゚)\(- -; 泣くな蒼天!!

ありがとっ♪σ(≧ω≦*)

No title

発想の転換で行きましょう!(奨)
私も親ウマ&シカの1人ですが・・・(笑)
親にならなければ味わえない喜怒哀楽の感情や幸せや苦しみなどなどありますよね(想)
“愚”も含めて親であることの証と特権だと思って・・・乾杯!(杯)

No title

親の心理よくわかりますね~ 親はいつも心配 子はこうして
巣立つのですね~泣かされますね・・・ありがたく拝見いたしました。ポチ☆アローハ

No title

よこぼり365さん、ありがとうございます!
なんと、よこぼり365さんも、親ウマ&シカなのですか!?
さらに好感度UPですね~(*^。^*)
「愚」でも「賢」でも、親がいて、子がいて…乾杯!ですね♪

No title

グランマさん、ありがとうございます(*^_^*)
親はいつも心配して、子どもはそれがうるさいばかり。
巣立ちは寂しいけれど、それでこそ安心もできますね(^^)
グランマさんは私より人生の先輩ですから、もっともっと
いろいろなことを乗り越えてこられたのですね。いつもありがとうございます♪

No title

いや~、わかるわ~。この気持ち。
人間は、自分に対する感情、思いと、他人に対する感情思いと、我が子に対する感情、思いと…、同じようには保てないのですね。
それが人間なのですねえ。
いいじゃあないですか~。きっと息子さんもうっとうしく表現しながらも嬉しく思っていると思いますよ。

No title

日本平333さん、ありがとうございます。
お嬢さんは、(私の記憶に間違いがなければ)外国にいらっしゃるのでしたね。
親と子と、それぞれにいろいろな気持ちがあるものですね(*^_^*)
「それが人間」ですね~。
息子は、文学の課題レポートがあるときだけ、「お母さん大好き」と
言わんばかりに頼ってきています^^;

No title

ひーさんの脚色本当に上手で 涙がこみ上げてきました
いずこも同じです
娘は 一日でも早く親元を出たかったと 大学受験当時を述懐
しています
今 親元の近くに住んで おんぶにだっこの生活の感がありますが本人はそれは当然と思っているようです
親は転ばぬ先の杖ではないですが
心配ばかりしています
でも これも 順送りですよね

No title

ながみちさん、ありがとうございます。
お嬢さんも、早く親元を離れたかったのですね。
私も同じでした(*^_^*)
今、息子を送り出し、こうしていろいろと思うことがあります。
「順送り」という言葉が胸にしみますね。
今は、お嬢さんもお近くに住まれ、ご心配もおありでしょうが、
楽しみもまた、倍増ですね。
私はなかなか帰ることができず、親に申し訳ないです(^^)

No title

親になってみないと・・わからない事
親がいなくなると・・・わかる事
それでいいんです(^^)

No title

アラフォーのロンさん、そうですね。
理屈でならわかっているつもりでも、その立場になって初めて、
身に染みて思うんですよね。
人とは、そんなものなのでしょうね(*^_^*)

No title

初めまして、履歴から来ました。
一読した後、「笑いあり、涙あり…」とコメントしようとしたら、既に一番目の方が…

確かに親になって初めて分かることが多いですよね。
また、拝見させていただきます。

No title

8304輔さん、はじめまして♪
ご訪問とコメント、ありがとうございます(*^_^*)
だんだん、記事がお笑いになりつつあるのが悩みと楽しみのタネに
なっています(^^ゞ

子どもが一人立ちし、いろいろ思う今日この頃です(^^)