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吉本隆明氏の言葉をもっと聞きたかった

一面識もないのに、訃報の知らせが心に響くときがある。
吉本隆明氏逝去のニュースがそうだった。
「戦後最大の思想家」。
人はそう呼ぶ。
 
若いころの彼は、新鋭の論客だったそうだ。
私が彼の本を読み始めたのは、晩年に近いころ。
 
うすっぺらい内容を難解な言葉で飾り立て、
大上段に立って振り回すようなことなら、
ズブの素人に毛が生えた程度のライターにでもできる。
けれど、その逆は。
生活レベルの易しい言葉で語られる、深い思索、高い理論。
子どもにも、思索の素人にもわかるように示すことにこそ、
その人となり、物書きとしての力量が問われる。
その点、吉本隆明氏は、
「思想界の巨人」という肩書にふさわしい、第一級の人だった。
 
糸井重里氏との共著「悪人正機」(新潮文庫)で、
「本当に困ったんだったら、泥棒して食ったっていいんだぜ」という言葉に出会ったときは、ガツーンときた。
「「死」は自分に属さない」
「働くのがいいなんて、それはウソだよ」
いろいろなことを、べらんめえ調で語る氏の言葉には、
行間から圧倒的な存在感がにじみ出る。
厳しい経験と、揺らぐことのない信念に裏打ちされた言葉に、
ウソや迎合はない。
 
「「死」は自分に属さない」と言った彼の幕切れは、
おそらく、吉本ばななをはじめとしたご家族に、
ゆだねたものだったのだろうと思う。
 
もっと、吉本隆明氏の言葉を聞きたかった。
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コメント

非公開コメント

No title

私も、吉本氏の訃報をNHKラジオで聞き、心に響きました。
難解な言葉を羅列し偉そうにしている思想家が多い中で、彼の万人にも分かりやすい話は、本当の頭脳と思い遣りに満ちていましたね。

No title

☆恥ずかしながら、私は彼の著作は総て未読です。若い頃、彼の論を紹介した記事を読んだ時、随分厄介な文章を書く人だなあ、という悪印象を受けた為。なので、貴記事に紹介された文はちょっと意外でした。晩年になって変わったのでしょうか。

No title

吉本氏は、独特のズバッとした論調で、その時代の若者たちの閉塞感や不満を吸い上げて方向を示し、常にカリスマ的存在だったと思います。「…ぜ」とか「…ぞ」とか下町っぽい語り口も庶民的でしたね。ひーさん様も分野が広いですね。

No title

まさえ0504さんは、訃報をラジオで聞かれたんですね。
私はネットで見るまでまったく知らず、驚きました。
なんだか残念で、寂しい気持ちでした。
「本当の頭脳と思い遣り」、同感ですね。

No title

Hannibalさんは、吉本氏の若いころの論をご存知なのですね。
「新鋭の論客」だったころは、厄介な文章と思えるような難しさがあったのでしょうね。
私が読み始めたのは最近の文章なので、若者や子ども向けに親しみやすい対談などがあります(*^_^*)

No title

TABIBITOさんのおっしゃる通り、「独特のズバッとした論調」でしたね。
あのべらんめえがもう、新しく出てくることはないのが寂しいです。
TABIBITOさんの勉強量には、とてもとても、かないません(#^.^#)