親死に、子死に、孫死ぬ
***肉親を喪われたブロ友さんのために***
先月、知人を見送った。
少し、気持ちが落ち着いたので、そのことを書こうと思う。
亡くなったその人は、教員を定年退職された後、地域のために無償で働いてきた。
腰の低い、物腰の穏やかな方だった。
私のようなよそ者にも、気さくに声をかけて下さった。
お通夜にもお葬式にも行くことのできなかった私は、
お通夜の前日、お悔みに伺った。
応対して下さったのは、控えめで落ち着いた奥様と、
聡明さを目にたたえたお嬢様。
彼の人柄にふさわしい、ご家族だった。
彼は、最期のひと月をホスピスで送ったという。
ホスピスに入られる少し前、
体調の良いときを見計らって、
繰り返し旅行に行った思い出の場所へ、旅行に行った。
美術の先生だった彼は、そこで最後の自画像を描いたそうだ。
お世話になった方のところへも、挨拶に行った。
そして、ホスピスに入り、
奥さんのことを看取ってあげられないことに詫びを言い、
息をひきとった。
その人らしい、美しい逝き方だった。
人の最期に、美しい逝き方というものが求められて良いものかどうかは別として。
ご家族には、できる限りのことをやりつくした者にだけ与えられる、
安堵と落着きと、穏やかな悲しみがあった。
ある高僧のところに、
一筆、縁起の良い言葉を書いて欲しいと、やってきた男がいた。
そこで、高僧はサラサラと書きつけた。
「親死に、子死に、孫死ぬ」と。
男は怒り、どうしてこれが縁起の良い言葉かと言った。
高僧は答えた。
「こんな良いことはない。順番が逆になったらえらいことだ」と。
これは、金田一春彦の「ことばの歳時記」(新潮文庫)に載っている話。
私の父は、さよならも言わず、突然亡くなった。
亡くなるとわかっていれば、という思いにさいなまれるのと、
弱っていく肉親を見続ける悲しみは、
どちらが深いとも、私には言えない。
けれども、やはり、私の兄弟が父より先に逝かなかったのは、良いことだった。
奥様とお嬢様に、お悔みのお礼を言われた。
こちらこそ、どんなにお礼を言うべきか。
「長い間、本当にありがとうございました。
お疲れ様でした。」
小さくなったその方にお声をかけて、
冷え込んだ夜の道を帰ってきた。
**これは昨年2月にアップした記事ですが、このたびあらためて
アップしました**
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コメント
No title
生きていると、いろいろなことに出会いますね。
そうですね。
その人の生き方が、逝き方につながっているのだと思っています。
読んでくださってありがとうございます^^
2013-09-11 21:17 ひーさん URL 編集
No title
高僧にはまだまだ修行が足りんじょ(~_~;)
2013-09-11 21:18 ひーさん URL 編集
No title
みんな、それぞれに背負ってきたものと、
背負っていくものがあるんですよね。
それが、「生き方」と言われるのかもしれません。
これからは、たくさん幸せがありますように♪
2013-09-11 21:21 ひーさん URL 編集
No title
実感としてはわかりませんでした。
けれども、子どもができ、子どもの友人が若くして命を落とした時に、
その壮絶な重みを初めて受け止めました。
めでたいとは言い難くても、やはり順番でありたいですね。
私も、「またね」と言えるように努めます(*^_^*)
2013-09-11 21:24 ひーさん URL 編集
No title
素晴らしいお人柄ですねっ♪
残される辛さを労わる優しい気持ち
心に沁み入りますね…
ご冥福を心よりお祈り申しあげます
2013-09-11 21:42 蒼天 URL 編集
No title
私なんか、町内会の役員が回ってきても
ぶーぶー文句たれでしたけど(^^ゞ
時に、逝く人の方が強いこともあるのでしょうか。
残される人は、いつも寂しい。
ご冥福を心よりお祈り申しあげます
2013-09-11 21:56 ひーさん URL 編集
No title
受け止めようのない
現実と恐怖に向かっていくんだからね…
されど
見送る人はもっと強くなくてはねっ♪
俯き哀しむ人を慕う人がいる
俯き哀しむ人を心配する人がいる
逝く人はいつも
見送る人の笑顔を求めているから
ならば
逝く人には
涙での応援よりも
笑顔での応援をっ♪
私の笑顔は不屈の笑顔^_-☆
ありがとう♡姉御♡
2013-09-11 23:52 蒼天 URL 編集
No title
僕が逝く人になったら
姉御はブサイクな顔して泣いてねっ♪
おやすみ~(=゚ω゚)ノ
2013-09-11 23:54 蒼天 URL 編集
No title
強くあらねばならないんだね。
見送る人もまた、それ以上の強さで、
笑顔で見送るんだね(^_-)~☆
できるかな~^^;
蒼天はいつも
「笑顔だよっ♪」だもんね(*^。^*)
こちらこそ、ありがとう。
2013-09-12 00:25 ひーさん URL 編集
No title
~(゚O゚)\(- -;
私の墓参りするって、いつか言ってたけど…(-_-;)
しかも泣いても美しいけんね(*^。^*)
2013-09-12 00:28 ひーさん URL 編集
No title
気になるひと言だね(°_°)
僕が こしょぐりに行くから
大丈夫~大丈夫~♪
とりあえず
風邪治すてねっ♪
おやすみ~☆彡
2013-09-12 00:38 蒼天 URL 編集
No title
こしょぐりに来る前に
風邪薬持ってきて~♪
週末までには元気になりたいじょ^^;
おやすみ~☆彡
2013-09-12 00:45 ひーさん URL 編集
No title
蒼天との会話続いて珍しいね(*^。^*)
愛する父と犬が逝った時はずーと泣いてたよ!
ただ
逝く前に必死に生きようとする姿を見てたら
余計に悲しかったけどね。
2013-09-12 07:54 エミ URL 編集
No title
蒼天は単発だもんね(笑)
たまに会話もするらしい(笑々)
生きようとする姿を見るのは、
なんともつらいものですね。
でも、それを引き継いで、
あとを生きていかなくちゃね(*^_^*)
いつもありがとです~♪
2013-09-12 20:06 ひーさん URL 編集
No title
2013-09-12 22:52 うっちん URL 編集
No title
夕日は、大阪で撮りました♪
2013-09-12 23:22 ひーさん URL 編集
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私がずっと思ってたこと、、兄にはわかっていたのですね。
今一緒に住んでる母は次男(主人の弟)を若くして亡くしてます。
私は4歳になる長女をみながら慣れない田舎のお葬式に関連する雑事に訳も分からず追われ、その儀式は1週間ほど続き、疲労困憊した私には義母の悲しみなどとても思いやることが出来ませんでした。
昨年末、27回忌の法要を営んだ際、途中から義母の眼には涙があふれていました。
逝く人、見送る人、それぞれ本当に辛いものですね。
でもどんな悲しみも寂しさも、時間がゆっくりとゆっくりと癒してくれるような気がします。
2013-09-13 16:31 shizu URL 編集
No title
やはり、子どもとして一番の親孝行は、
両親を見送ってあげることだと思います。
それが、望んでできるかどうかはともかくとして…。
お義母さまも、お辛い思いをなさったのですね。
何十年経っても、悲しみは頬をぬらすものなのでしょう。
私も、突然の父の死から4年が経ち、ようやく立ち直れたように思います(*^_^*)
2013-09-13 23:47 ひーさん URL 編集
No title
息子の大学時代の友達が心筋梗塞で急逝されました。
(息子と同じくまだ結婚はされてなかったとのこと…)
多分ご両親は60代か70代の初め。子に先立たれる悲しみをどのように耐えておられることか…と胸がつまりました。
12日は亡父の命日でした。定年の翌年に59歳で亡くなった父。
母も子もみんなその齢を超えました。
この齢まで生きてたらこんなことが出来たのに…と時々思います。
2013-09-14 12:24 よねちゃん URL 編集
No title
ご両親様のお気持ちを思うと…。
死は、必ずだれにでも訪れる不変の真理ですが、
自分の特別な人になると、特別な事態になってしまうのですよね。
これもまた、誰でも…。
お父様、お若くして逝かれたのですね。
私は父が71歳で亡くなりましたが、それでも早いと
思ったものでした。
でも、ご家族様が、皆さまそのお年を越えられて、良かったと思います。
2013-09-14 20:37 ひーさん URL 編集